部品の取り外し、その為には部品の半田温度を
融点(Pbフリー半田で220度程度)まで加熱しなくてはなりません。
急激な温度上昇は様々な悪影響が出てきますが、
その中でも大きな問題になるのが部品や基板に含まれる水分です。
半田ごてで部品のリードや基板のパットのみを加熱することが出来れば
さほど大きな問題は無いのですが、
多ピンの部品を取り外そうとすると半田ごてでは難しくなってくるので
広範囲を加熱できる別の方法を取ることになります。
その時、水分が含まれた状態だとどういうことが起きるのでしょうか。
基板に水分が多く含まれていると基板の劣化に繋がります。
具体的に挙げていきます。
①ミーズリングが起こりやすくなる。
ガラスエポキシ素材の基板のガラス繊維がエポキシ樹脂から剥離する現象です。
②層間剥離(デラミネーション)が起きやすくなる。
基材となる樹脂部分、銅配線、レジストの層が剥離してしまう減少です。
これらは基板内部の破壊ですね。
これが起こると例え動作に問題は無くても、製品として出荷することは難しいです。
信頼性が求められる基板ではこれが起こった時点で不良です。
修理品では問題にならない場合もありえます。
③基板が反りやすくなる。
基板全体の症状ですね。
これは見た目もさることながら、動作に直接影響する場合があります。
BGAやLGA、QFN等の部品を実装する場合に致命的です。
反った状態の基板面に実装しようとすると浮いてしまい
接続されないピンが出来てしまう可能性が出てきます。
基板の時とほぼ同じです。
①部品内部の破壊
熱で水分が膨張して部品内部の変形が起こり断線が起こります。
水分を含んだ状態のBGAに取り外しの為に加熱したところ、
内部の水分が急激に膨張し弾けて飛んだという話もあるくらい。
もちろんそのBGA完全に不良品です。
②部品の反り
ICチップも基板と同様の素材を使用しているものもあり、同じように反りが発生しえます。
BGAは反るとほぼ使用できません。
基板なら反りを逆に曲げることで修正できる場合もありますが、
小さいBGAが反ると修正はほぼ不可能です。
以上の様な問題を起こさないために行うことが基板、部品の除湿(ベーキング)作業です。
状態によってそれぞれ異なる条件で除湿を行います。
基板は比較的除湿が容易いです。
実装前の基板のみの状態では120度程度で数時間行うのが良いようです。
実装した基板の改造や修理の場合には状況が変わってきます。
熱に弱い部品が実装されてしまっていると120度程度ではどんな問題が発生するかわかりません。
低温、長時間のベーキングを行っています。
部品の除湿は基板よりも難しいです。
部品不良等でICの交換を行う場合にはICのみの状態で除湿を行うことができるので
120度で長時間ベーキングを行うことが出来ます。
しかし、取り外したICを再利用する場合には状況が変わってきます。
捨て基板からICを取り外し目的の基板に移植する場合には高温での除湿も可能ですが、
実装不良や半田割れで元の基板に再度実装する場合には
基板の他の部品を痛めずに目的の部品をしっかり除湿する必要があります。
他の部品を痛めない低温、長時間の乾燥を行っていますが、ICによっては
長時間の乾燥でも水分の抜けにくいものがあるので注意が必要です。
今回はお客様へのご説明の際にご案内できるように、
説明メインの記事になってしまいました。
工房やまだは20数年の長きに渡り、日本のものづくりに関わり、
基板実装、基板改造の歴史を見て、切り拓いてまいりました。
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たまお (水曜日, 13 4月 2022 10:44)
古い実装済み基板では何度で何時間がよさそうなのでしょうか